「大学に入る前から大学院のことを調べるなんて気が早いのではないか?」と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、早いうちから自分の進路やライフプランを考えておくに越したことはありません。自分自身の将来のことですから、今のうちからしっかりと考えて将来設計をしていきましょう。ここでは大学院への進学について詳しく説明していきます。
大学院は、大学の学部で学んだ知識を活かして、応用的な研究を行う学術機関のことです。専門分野に秀でた教授に教えられながら、自分の研究に打ち込むことができます。このように専門性を特化させることができますので、研究職を目指す場合には大学院への進学する方がほとんどです。
大学院には大きく分けて4つの種類があります。
1.学部のある大学院
学部のある大学院とは、学士課程(学部)の上級機関となる研究科のことです。例えば、理学部のある大学に理学研究科があるといったことです。研究科には他にも、法学研究科や文学研究科など多くあります。
2.独立研究科
独立研究科とは、その学問に対応する学士課程(学部)を持たない研究科のことです。例えば、エネルギー科学研究科などがあります。さまざまな学部の卒業生を受け入れることで、新しい視点を取り入れたり、新しい研究分野を創出したりしています。
3.専門職大学院
専門職大学院とは、研究を目的とするのでなく、高度に専門的な職業人を養成するための機関のことです。つまり、実務に根差した機関と言えます。
4.大学院大学(独立大学院)
大学院大学とは、学士課程(学部)自体を持たない機関のことです。「独立大学院大学」や「独立大学院」などとも呼ばれています。大学院大学には、総合研究大学院大学や政策研究大学院大学などがあります。
大学院の制度として、修士課程と博士課程があります。基本的には修士課程が2年、博士課程が5年となっています。博士課程は5年一貫制のものだけでなく、前期2年と後期3年と分かれているものがあります。多くの大学院では、博士課程の前期2年を修士課程とみなしています。論文の提出、研究成果の審査や試験などを通して修了を認められると、「修士」や「博士」といった学位をもらうことができます。
一体どれくらいの人が大学院に進学するのか知りたいという方もいらっしゃるでしょう。
大学院等への平均進学率は、2018年3月時点で11.8%となっています。10人に1人は大学院に進学しているのです。その内訳としては、理学部・工学部・農学部の3つの学部が大半を占めています。理学部の42.8%、工学部の36.8%、農学部の24.8%の学生が進学をしています。このように進学するのは理系の学生が多いということがわかります。しかし、人文科学部・社会科学部・教育学部などでも5%近くの学生は進学をしています。
大学院へ進学するには、入試を受ける必要があります。大学入試と同様の入試方法となります。以下に紹介していきますので、確認しておきましょう。
・一般入試
学士課程(学部)を卒業した人・卒業見込みの人が受けられる試験のことです。もちろん自分の所属している大学以外の大学院に受験することはできます。試験の内容は、外国語と専門科目の筆記試験、書類審査、面接が行われることがほとんどです。
・推薦入試
学士課程(学部)で成績優秀な場合に、大学院進学を認められる入試制度のことです。こちらも一定の条件を満たせば学外からの入学を認める大学院も少なくありません。
・AO入試
人物像が学校の求めるそれに合致する場合に合格を認めるAO入試。大学院の入試にもAOの制度が設けられています。
・社会人入試
社会人入試とは、一度社会に出て会社などに勤めた方を対象とした入試のことです。試験内容としては筆記試験を行わない大学院がほとんどですが、大学院によって大きく異なりますので、志望する大学院のホームページを確認してください。
ここまで読んで、大学院については深く理解していただけましたでしょうか。ここからは大学院に進学するメリットとデメリットを紹介していきます。
まずは、大学院に進学するメリットについて見ていきましょう。ここでは5つのメリットを紹介していきます。
・高い専門性が身につく
学士課程(学部)で学んだ知識をもとに、高度で専門的な研究をすることになります。学部卒の方よりも少なくとも2年以上長く研究するわけですので、高い専門性が身につきます。
・就職の選択肢が増える
大学院を卒業すると、「修士」や「博士」といった学位をもらうことができます。(学位に関して詳しく知りたい方はこちらの「大学や専門学校で与えられる学位・称号の種類は?」をご覧ください。)学歴が増えることによって、自身の能力をアピールすることができるでしょう。また、理系で研究職を目指す場合には、修士以上の学歴が求められることもありますので、志望する研究が行われている企業の採用基準を確認してみましょう。
・プレゼン能力が向上する
大学院生になると、学部生時代と比較して発表の機会が多くなります。発表の回数が多くなるため、その分だけ資料を作る技術も、プレゼンのスキルも向上していきます。
・研究にかかる費用が融通されることがある
大学院に通うには、当然学費がかかってしまいます。しかし、成績が優秀だと奨学金を返さなくてもよくなる、あるいは半額免除されることもあります。
また、学会発表のために海外へ行くこともあります。その際の渡航費用については、研究室の予算で出してもらえることがほとんどです。
・初任給が高い
大学院卒の場合には、年齢が高くなることと、専門性が高まることから就職した際に初任給が高くなります。学部卒に比べると約3万円高くなります。
次に、大学院に進学するデメリットについて見ていきましょう。以下に3つのデメリットを紹介していきます。
・学費など費用がかかる
大学院に進学するには当然のことながら学費がかかります。その点についてはデメリットになるでしょう。
・社会に出るのが遅れる
学部卒の場合に比べて、大学院へ進学したら少なくとも2年以上は社会に出るのが遅れます。2年間の社会経験は大きな差となります。もちろん、大学院生はその分だけ研究ができるわけですので、どちらがよいとは一概には言えません。社会経験では得られないものを追求していく必要があります。
・研究が忙しい
大学院へ進学すると、学士課程のときのようにはいきません。なぜなら学士課程のとき以上に求められるものが増えてくるからです。研究室にもよりますが、朝から晩まで研究室にこもりきりになるほど忙しくなることもあるかもしれません。
以上、大学院について詳しく説明してきました。ここでは一般的なメリットとデメリットを紹介してきましたが、大切なのは自分で「研究をしたい」という気持ちがあるかどうかです。大学に通っていく中で、新しくやりたいことを見つけることもあります。研究をしたいと思えることができたときには迷わず突き進んでみるとよいのではないでしょうか。もちろんその際には、独断で決めるのはおすすめできません。お金もかかることですのでご両親と相談することはもちろん、その研究科でよいのかどうかを先生方に相談するなど、慎重に決断しましょう。