入学式と言えば、「桜をバックに記念写真」というイメージが強いかもしれません。しかし近年、桜が咲き誇る「春」ではなく、紅葉鮮やかな「秋」に入学式を挙げる大学が登場し始めています。日本ではまだなじみの薄い「秋入学」とはいったい何を目的に始められたのでしょうか。ここでは、秋入学の概要とその背景や課題点について紹介していきます。大学進学を考えている人は、春入学以外の選択肢として1つの参考にしてみてください。
秋入学とは、9月に入学するシステムのことです。これまで日本では多くの大学で、4月に入学式が挙げられていました。現在もそれはあまり変わっていません。しかし、グローバル化の流れを受けて、国公立大学・私立大学問わず、9月入学の方式を採用する大学が現在増加しています。というのも、日本では春に入学し、春に卒業するのが当たり前かもしれませんが、世界的に見ると実は少数派なのです。欧米や中国など、私たちが知っている先進諸外国では春ではなく秋に入学し、秋に卒業するのが通例となっています。世界では約7割の大学が秋入学の方式をとっているとも言われています。秋入学のほうがグローバルスタンダードというわけです。そのため、4月入学の方式をとっていると、こうした国際基準とズレてしまうことで様々な弊害が発生する、あるいは発生しているのではないかと考えられるようになり、日本でも秋入学が導入されることとなりました。
日本の大学は国際化が遅れていると言われており、その影響もあってか、日本の国際大学ランキングは、「THE世界大学ランキング2018」によると、東京大学でさえ46位、京都大学でも74位と、低い順位を推移しています。また、日本から海外へ留学する学生の少なさも問題となっています。学生たちは、「国内と海外で入学時期がズレることによって留年してしまうのではないか」、「4月の新卒採用に対応できず就職活動が不利になるのではないか」と不安に思っており、なかなか留学に踏み出せないのです。海外から日本へ留学してくる学生についても、同じような問題が起きています。入学時期のズレが留学することの足かせになっているのです。こうしたズレを解消し、留学する学生を増やすだけでなく、大学自体の国際化を進めるために秋入学が導入され始めています。
秋入学を導入することで、留学を促進し、大学のグローバル化を図れる点は利点ですが、秋入学を導入するうえで課題があることも事実です。秋入学に関して一番議論されているのが、「ギャップイヤー」あるいは「ギャップターム」と言われる空白の時間についてです。9月入学を導入した場合、高校は今まで通り3月卒業なので、入学までの半年間が空白の時間となります。加えて、9月入学で大学に入り、9月に卒業した場合、新卒であれば4月まで就職を待たなければなりません。このように9月入学をすることで生まれる空白の時間のことを、ギャップイヤー・ギャップタームと呼びます。この期間をどう過ごすかが問題とされています。前向きな考え方をすれば、ギャップイヤーを使って、短期留学をしたり、企業のインターンシップへ参加したり、ボランティアに参加したり様々な経験を積む期間として利用できると言えます。一方で、空白の時間があることで「教育費」など、保護者の負担が増えるのではないか、長いブランクによって学生のモチベーションが低下するのではないかといったマイナス面の指摘もされています。秋入学を導入している大学では、この問題に対応するために、ギャップイヤー中に行うことを指定していたり、義務付けていたりと、様々な対応策を講じています。中には、ギャップイヤーでの活動を単位として認める大学まで出てきました。
大学側は秋入学を導入するだけでなく、国際化という観点から、外国人講師を増やしたり、留学生を多く受け入れたりするなど、総合的に国際化を進めています。グローバル化の波が押し寄せている現在、今まで通りの春入学だけでなく、秋入学も視野に入れて考える時代に推移し始めているのかもしれません。